心に寄り添うことで見えた
本当の気持ち。
エピソード
5
![テーブルに並べられたお皿とワイン](https://www.shoubikai.or.jp/wp-content/themes/shoubikai/assets/img/episode/episode-5-01.jpg)
想い出のディナー
ワインと
鰯の甘露煮
今から25年以上前、
介護保険制度もなく、
措置の時代などと言われていた頃の話しです。
特養ですから入所者様にとっては終の棲家。
私達職員もその方の人生最後の時間を
日々一緒に過ごさせていただいています。
どんなにお元気な方であろうと、
人間誰しもその時は平等にやってきます。
今でこそ看取り期のケア計画を元に
多職種連携が当たり前ですが、
当時は本人やご家族にただ寄り添いながら、
最期のお見送りをさせていただくことが
主流だったように思います。
![水面の画像](https://www.shoubikai.or.jp/wp-content/themes/shoubikai/assets/img/episode/episode-5-02.jpg)
その方は赤いふちの眼鏡をかけ
ショートカットがお似合いの小柄な女性の方。
体力や食欲が落ち、
毎日の食事や水分も
難しくなってこられていました。
何とか少しでも食べられる間にと、
本人に食べられそうなもの、
飲めそうなものを伺ってみると
「私ね、ワインが好きなの。
自宅でもよくワインを飲んでいたのよ。
赤玉ポートワインが飲みたい。
それとね、鰯の甘露煮が好物。」
![ベッドわきに置かれた眼鏡と本](https://www.shoubikai.or.jp/wp-content/themes/shoubikai/assets/img/episode/episode-5-03.jpg)
![ワインの画像](https://www.shoubikai.or.jp/wp-content/themes/shoubikai/assets/img/episode/episode-5-04.jpg)
特養施設でお酒を出すのは
年明けのお屠蘇ぐらい。
看護職員や当時寮母、寮父と呼ばれていた
介護職員と相談し、何とか準備してあげたいね。
と言うことになりました。
本人が希望された赤玉ポートワインは
ワイングラスで食事と一緒に提供しました。
少しずつ味わいながら
「あ~美味しい。」と言われた笑顔が
今でも忘れられません。
鰯の甘露煮は自分の手でむしりながら
「これこれ。」と
やはり笑顔で召し上がられました。
それから間もなく旅立たれました。
亡くなる前に
本人の希望するものを提供できたこと。
本人も美味しいと味わえたこと。
関わった職員も栄養士である私自身も、
最期の時まで食の楽しみ、
食の大切さは続くものであることを
教えていただきました。
![ワインの画像](https://www.shoubikai.or.jp/wp-content/themes/shoubikai/assets/img/episode/episode-5-05.jpg)
今でも折に触れ、
入所者様やご家族様へ好きな食べ物、
得意だった料理などを伺っています。
その方の最期の時まで食のお役に立てるように。
![イワシの甘露煮の画像](https://www.shoubikai.or.jp/wp-content/themes/shoubikai/assets/img/episode/episode-5-06.jpg)
![ブドウ畑の画像](https://www.shoubikai.or.jp/wp-content/themes/shoubikai/assets/img/episode/episode-5-07.jpg)
エピソードスタッフ
M.S.(管理栄養士 / 栄養管理食事サービス部)
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